○北区地域公共交通基本条例全文と解説
東京都北区地域公共交通基本条例
―誰もが安心して快適に移動しやすいまちづくり―
<条例案と解説> 令和4年6月10日最終案
この条例案はSDGsターゲット11.2と共通の理念でつくられています。SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。SDGs には17のゴール(目標)と169のターゲットがあります。
SDGsターゲット11.2
11.住み続けられるまちづくりを 都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする
ターゲット(11.2)
2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子供、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
東京都北区地域公共交通基本条例案(条文と解説)
目次
前文
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 基本的事項(第8章―第14条)
第3章 地域公共交通会議(第15条・第16条)
第4章 雑則(第17条―第19条)
付則
東京都北区は、豊かな歴史と文化遺産、飛鳥山の桜や荒川の水辺空間があり、山手線、京浜東北線、宇都宮線、高崎線、埼京線、地下鉄南北線、東京さくらトラム(都電荒川線)及び都営・民間バス路線が通り、埼玉県に接し「東京の北の玄関口」として、都市基盤の進展とともに交通利便性の優れたまちとして発展してきた。
一方、南北に崖線が走り「高低差」による地形的な課題があり、超高齢社会の急速な進行やバス路線の再編等に伴い、移動に困難を感じる区民の声が高まっている。
このような状況の中、環境問題や超高齢社会に対応し、より交通利便性を高め、魅力ある東京都北区(以下「区」という。)を創造し「多様な交通手段を活用して、誰もが安心して快適に移動しやすいまちづくり」を実現することが重要である。この考え方はSDGs のターゲット11.2 と共通のもので、「北区ゼロカーボンシティ宣言」にもつながるものである。そのためには、公共交通事業者だけではなく、区や区民、事業者も一体となって地域公共交通を支えていくことが求められている。
よってここに、地域公共交通が区民の暮らしを支え、自由に移動できる手段として、区民が将来にわたって安全に住み続けるために必要不可欠なものであることを認識し、誰もが安心して快適に地域公共交通で移動しやすいまちづくりを目指して、この条例を制定する。
【解説】北区の魅力の一つとしての交通利便性をより一層高めるため、区内の交通環境の現状と課題について触れ、公共交通機関の整備を促進すると共に、「多様な交通手段を活用して、誰もが安心して快適に地域公共交通で移動しやすいまちづくりをめざします。」を条例化したものである。また、このことはSDGs の目標(誰もが公共交通にアクセスできるまちづくり)と共通であり「北区ゼロカーボンシティ宣言」にもつながることを記述した。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、誰もが安心して快適に移動しやすいまちづくり(以下「移動しやすいまちづくり」という。)に関し、基本理念を定め、並びに区、区民、事業者及び公共交通事業者の役割等を明らかにするとともに、移動しやすいまちづくりに関する施策(以下「施策」という。)の基本的事項を定めることにより、施策を区、区民、事業者及び公共交通事業者の協働により総合的、計画的及び効果的に推進し、地域公共交通の利用を軸とした人中心のまちづくりへの転換を図り、もって区民が安全で暮らしやすい社会の実現に寄与することを目的とする。
【解説】基本理念、区等の役割、基本事項を定め、「誰もが安心して快適に移動しやすいまちづくり」の推進をこの条例の目的と規定した。また、以下「移動しやすいまちづくり」と略することを付記した。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1)公共交通 区民の日常生活又は社会生活における移動のための交通手段として不特
定多数の者に利用される交通機関をいう。
(2)地域公共交通 公共交通を補完し、区民の日常生活若しくは社会生活における移動又は観光旅客その他の北区を来訪する者等の移動のための交通手段として利用される公共交通機関をいう。
(3)区民 区内に住所を有する者及び区内に勤務し、又は在学する者をいう。
(4)事業者 区内で事業活動を行う法人その他の団体及び個人をいう。ただし、公共交通事業者を除く。
(5)公共交通事業者 次のいずれかに該当する者をいう。
ア 軌道法(大正10年法律第76号)第4条に規定する軌道経営者
イ 道路運送法(昭和26年法律第183号)第9条第1項に規定する一般乗合旅客自動車運送事業者(専ら高速自動車国道法(昭和32年法律第79号)第4条第1項に規定する高速自動車国道を利用して、都市間の旅客の運送を行う者を除く。)及び道路運送法第9条の3第1項に規定する一般乗用旅客自動車運送事業者
ウ 鉄道事業法(昭和61年法律第92号)第3条第1項の規定に基づき許可を受けた鉄道事業者(旅客の運送を行う者に限る。)
【解説】他自治体の条例、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」を参考に特別区の現状を踏まえ地域公共交通について定義した。
(基本理念)
第3条 移動しやすいまちづくりは、地域公共交通が心豊かに元気で快適な生活を送るために必要不可欠なものであるとの認識の下、区は地域公共交通の利用を軸とした人中心のまちづくりへ交通環境の整備に努めるものとする。
2 区、区民、事業者及び公共交通事業者は、将来にわたって安全・安心な地域公共交通を維持・発展させるため、それぞれの役割を担い、協働し、交通環境の整備及び区民の地域公共交通の利用推進に一体となって努めなければならない。
(区の責務)
第4条 区は、前条の基本理念にのっとり、地域公共交通に関する総合的な計画を策定しなければならない。
2 区は、前項の計画に区民、事業者及び公共交通事業者の意見を反映させるよう努めるとともに、その計画実現のための施策の実施に当たっては、それぞれの理解と協力を得るよう努めなければならない。
(区民の役割)
第5条 区民は、地域公共交通の利用を軸とした人中心のまちづくりへの転換を図るため、地域公共交通の利用の促進について理解と関心を深めるよう努めるとともに、区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、事業活動及び従業員の通勤における地域公共交通の利用の促進に努めるとともに、区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。
(公共交通事業者の責務)
第7条 公共交通事業者は、地域公共交通の利用の状況を踏まえ、区の地域公共交通の利便性を高めるようハード・ソフト一体的な取組の推進に努めるとともに、区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。
2 公共交通事業者は、その運行する地域公共交通の利便性向上に関し、利用者に情報を提供するとともに、利用者からの要望等に対しては、その運行に反映させるよう努めるものとする。
【解説】基本理念で地域公共交通を重視した交通環境の整備と「区民の地域公共交通の利用推進」が一体となって行われなければならないとし、そのための区・区民・事業者などの責務等を規定した。公共交通事業者の責務では、ハード・ソフト一体的な取り組み等を踏まえたものにした。
第2章 基本的事項
(地域公共交通計画)
第8条 第4条第1項の計画は、区が移動しやすいまちづくりを総合的、計画的及び効果的に推進するために策定する区内の地域公共交通に関する総合的な計画である北区地域公共交通計画(以下「計画」という。)とする。
2 区は、計画を策定するときは、第15条に規定する北区地域公共交通会議の意見を聴かなければならない。これを改定するときも同様とする。
3 区は、計画を策定し、又は改定したときは、速やかにこれを公表しなければならない。
【解説】条例で北区地域公共交通計画の定義付けをした。併せて地域公共交通会議からの意見聴取を位置付けた。
(地域公共交通の環境整備)
第9条 区は、移動しやすいまちづくりを推進するため、地域公共交通の環境整備を行うものとする。この場合において、区は、地域の安全・安心の推進及び環境負荷の低減に努めるものとする。
2 区は、前項の環境整備を行うに当たっては、地域公共交通の利用を軸とした人中心のまちづくりへの転換を図るため、様々な主体と連携して地域公共交通の整備を行うものとする。
3 区は、地域公共交通に係る技術革新の調査及び導入に関する各種検討を行うものとする。
4 区は、身体に障害のある者、移動が困難な高齢者等の移動を確保することに努めるものとする。
【解説】区に地域公共交通の環境整備を位置付け、その際、区民の健康・環境・移動困難者への配慮及び技術革新の
調査・導入検討を位置付けるもの。
(地域公共交通の導入)
第10条 区は、地域公共交通機能の向上を要する箇所については、公共交通事業者に協力を求めるとともにコミュニティバス、小型乗合交通・タクシー等(デマンド型等)(以下「コミュニティバス等」という。)を導入し、当該箇所の交通手段が確保されるよう努めるものとする。
2 区におけるバス等の交通体系は路線バスを基本とし、コミュニティバス等はこれを補完するものとする。
3 区は、コミュニティバス等を導入しようとするときは、区民の意見を聴取するとともに第15条に規定する北区地域公共交通会議の意見を聴かなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
【解説】交通利便性の向上との観点から、「地域公共交通機能の向上を要する箇所」での交通手段の確保につい
て区の努力義務とし、現在のコミュニティバスを条例上も規定した。また、路線バスとの関係、区民、地域公共
交通会議からの意見聴取を位置付けた。
(意識の啓発等)
第11条 区は、地域公共交通の利用の促進等、移動しやすいまちづくりに関する区民及び事業者の意識の啓発に努めるとともに、区民及び事業者による自主的かつ自発的な活動が推進されるよう努めなければならない。
(区民意見の聴取)
第12条 区は、施策を推進するため区民意見の聴取に努めるものとする。
(表彰)
第13条 区は、施策の推進に著しく貢献した者を表彰することができる。
(区民等への支援)
第14条 区は、施策を推進するため必要があると認めるときは、区民、事業者又は公共交通事業者に対し、技術的又は財政的な支援をすることができる。
【解説】一方的な行政からの啓発だけでなく区民、事業者の自発的な活動推進を重視し、区民参加、表彰など規
定した。また、区民、事業者に財政を含め支援することができるようにした。
第3章 地域公共交通会議
(設置)
第15条 施策の推進及び地域の実情に即した地域公共交通の利便性向上に必要となる事項を協議するため、道路運送法施行規則(昭和26年運輸省令第75号)第9条の2に規定する地域公共交通会議として、北区地域公共交通会議を置く。
(組織)
第16条 北区地域公共交通会議は、区長が委嘱し、又は任命する委員をもって組織する。
2 この章に定めるもののほか、北区地域公共交通会議の組織及び運営に関し必要な事項は、別に定める。
【解説】道路運送法による現「北区地域公共交通会議」を条例上も位置づけ定義した。
第4章 雑則
(財政上の措置)
第17条 区は、施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
【解説】財政上の負担について区の努力義務を規定したもの。
(国等に対する要請等)
第18条 区は、施策を推進するため必要があると認めるときは、国、東京都その他関係団体に対し、必要な協力の要請又は提案を行うものとする。
【解説】残念ながら現状では地域公共交通の確保は区の権限・財政では限界があり、国、東京都の協力は不可欠であり規定した。
(委任)
第19条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行について必要な事項は、別に定める。
付 則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
(経過措置)
2 この条例の施行の際、現に存する北区地域公共交通計画については、この条例の規定に基づき策定されたものとみなす。
3 この条例の施行の際、現に存する北区地域公共交通会議については、この条例の規定に基づき設置されたものとみなす。
【解説】道路運送法を根拠に策定した北区地域公共交通計画設置された北区地域公共交通会議を引き続き運用するため規定した。
【参考法令】 道路運送法(昭和26年)
〒114-0032
東京都北区中十条3-8-9
TEL 03-3908-8669